非開削沈下たるみ修正システムUGS工法研究会ホームページ

UGS工法研究会

UGS工法関連報文

UGS工法関連の発表報文より2編を下に掲載します。

低コストな沈下・たるみ修正技術
〜U. G. S (Under Ground Scope)工法〜

吉川重弘(工法研究会会長)
荒木紘一(U.G.S工法研究会事務局長)
「月刊下水道 Vol.21 No.16」(1998年11月15日発行)所収

はじめに

現在、我が国の下水道事業は住民の要望と相俟って、急速な発展を遂げつつあります。平成8年度の下水道普及率は55%に達し、農業集落排水等、関連下水道事業も含めるとかなりの高普及率に到達していると考えられます。
一方、下水道事業に早くから着手していた政令都市は、50年のコンクリート耐用年数を経過した管路施設をもち、その延長は増えつつあります。
現在、政令都市における50年経過の管路延長の合計は約4,500kmあります。欧米の経験から、その内の10%が老朽化が酷く更新を施す対象管路となり、またその内の10%が非開削工法による補修対象管路といわれています。
現在では、改 築・修繕工法として反転工法、形成工法、鞘管工法、部分補強工法等の非開削工法が広く使われるようになりました。しかし、既存の工法のみでは維持・管理に十全な対処を施すことが難しく、このことも新たな課題として生じてきています。
その一つに、不等沈下等に起因する管きょの〔たるみ修正〕などがあります。これまでは施工性・作業性・経済性の観点等から困難とされ、維持管理の補修工法から見過ごされがちでした。しかし、自然流下方式をとる下水道管施設でのたるみは、排水流量の低下、管きょの破損、浸入水等を招く原因であることから、たるみ補修は管きょの維持補修上、不可欠であると考えております。

U.G.S工法の役割

U.G.S工法は管きょ、マンホールのたるみ・沈下を非開削によって修正する技術です。
これまでの反転工法、形成工法、鞘管工法、製管工法、部分補強工法等の改築・修繕工法に〔たるみ・沈下修正工法〕を新たに加えることで、より総合的な管きょ の改築・修繕が可能になりました。このことは、管きょの耐用年数を延長することになり、下水道をはじめとするライフラインの維持管理コストの縮減、都市生 活の充実に、U.G.S工法が寄与できるもとの存じます(図-1)。

図-1
図1

工法の原理

図-2
図2

薬液注入工法による地盤改良では、細粒土地盤に注入剤を注入すると、普通には水圧破壊が起こって、その割れ目沿いに割裂の形態をとる注入(fracturinggrouting)が行われるとされています。そして土によっては、割裂注入面からその両側に若干の浸透注入が行われ、この形態を割裂・浸透注入と呼びます(図-2)。
このような注入の特性は、地盤や構築物の隆起、地中埋設物の変位を生じる原因であり、地盤改良の施工上においては注入技術に関する大きな問題となっています。
U.G.S工法では、この注入特性を顕著に有する瞬結タイプの薬液注入を、意識的に管きょの周辺で行い、管きょなどの地中埋設物を移動することに応用しています。

施工方法

1. 施工フロー(図-3を参照)
図-3 U.G.S工法施工フロー
U.G.S工法施工フロー
2. 施工方法
(1)切削排土工

管きょなどの地中埋設物の移動は、前述の注入特性で理解できますが、単純に管きょ周辺で注入を行った場合には、隆起の現象は移動させようとする対象の管きょにとどまらず、地盤・構築物・近くの地中埋設物にも同時に変位を生じることになります。
この支障を克服するために、管きょの周辺に地中拘束力を解放する誘導領域を形成し、対象管きょの上部に派生する隆起圧を収束する工程が必要となります。
この工程を切削排土工と呼びます。
沈下した管きょを上方に移動する場合、管頂上に土砂排出用パイプを修正範囲の全域に設置します。土砂排出パイプの内部に、高圧水や圧縮空気を噴出する切削ロッドを挿入して誘導領域の地盤切削を行います。切削された土砂は泥水化して、地上に排出されます。
この作業により管きょ上部に泥水に置換された空隙が形成されます(図-4参照)。

図-4
図4
(2)事前引締注入工概念図

土砂排出パイプの設置後、切削排土工に先だって切削部分を除く上部地盤に、切削による陥没、地盤崩壊防止を目的とする薬液注入を行います。
この工程を事前引締注入工と呼びます(図-5参照)。

図-5
図5
(3)修正注入工概念図

これらの前工程の完了後、修正注入工程に入り、管きょ下部に薬液注入を行い、先に述べた注入特性により管きょを上方に移動させます(図-6参照)。

図-6
図6
(4)事後引締注入工

管きょの移動完了後、管きょ周辺に残る排土工の切削範囲、および影響範囲に薬液を充填して管きょと地盤の安定を図ります。
この工程を事後引締注入工と呼びます(図-7参照)。

図-7
図7

施工例

平成10年5月に、横浜市金沢区の臨海部において実施した管きょのたるみ修正施工例を以下に示します。

1.修正工概要
  •  人孔間距離:39.0m
  •  修正距離:33.8m
  •  最大修正高:108mm
  •  修正所要日数:15日間
2. 施工概要

本修正工は、鋼矢板山留めによる開削工法で布設された汚水管に部分的なたるみが生じたためU.G.S工法により修正したものです。
施工地は埋立て地であり、埋立て土は浚渫土と考えられる軟弱性の高い粘性土を主体としています。強度的にはN値1〜4を示し、相対稠度は「非常に軟」から「軟」の地盤です。
施工結果は、修正計画に対して誤差±5mmの高精度でした(図-8参照)。
また、修正注入量は18.1klで、ほぼ計画通りの数量で修正を完了しました。

図-8
図8

施工においてもっとも留意したことは、注入作業時の管きょ移動量管理です。
施工中は、複数の水位測定機を設置して地上のモニターに表示される管きょ内水位の変化を常時監視し、修正計画管低高との対比を行いながら移動量を管理しました(図-9参照)。

図-9
図9

おわりに

U.G.S工法研究会では、このたび標準積算資料を刊行しました。管理が困難である地下作業の特性、管きょのたるみ・沈下の形態の多様性等により、ともすれば経験則に偏りがちな一面を、施工事例の解析・検討により克 服できたと確信しております。
今後とも、本研究会は施工実績を積み重ね、さらなる管きょ更生・補修の適正化、コスト縮減を目指す所存です。今回の工法紹介が更生・補修の施工方法を御検討されている皆様のご参考になれば幸いに存じます。

U.G.S工法によるガス導管の非開削応力解放

町田浩一 / 東京ガス(株)神奈川事業本部神奈川導管ネットワークセンター
No-Dig '94 inCopenhagenにて発表

はじめに

近年、ガス導管工事における施工環境は非常に厳しいものとなってきている。特に都市部では、地下埋設物の輻輳化、交通量の増加による施工時間の制約、騒音・振動による苦情、人手不足、工事用地の確保難等の問題が顕著化し、工期の長期化、工費の増大の大きな要因となっている。このような施工環境の中で我々ガス導管工事に携わる者は、新しい土木技術の利用、新工法の採用による工期の短縮・コストダウンに全力をあげている。
ガス導管工事には、需要増に対応するための新設工事や損傷・老朽化に対応するためのメンテナンス工事等があるが、ガス原価を抑制するためには、これらの工事の種々な場面でコストダウンを図っていく必要がある。今回、メンテナンス工事のひとつであるガス導管の応力解放工事において、新しい土木技術を利用しコストダウンに成功したので、ここに報告するものである。

施工概要

ガス導管(鋼管)は地盤の沈下等による外力が作用すると、それに相当する応力が発生する。そこで、応力が許容限界に達する前に応力を解放することが、非常に重要なこととなってくる。従来、応力解放工事は開削によりガス管を露出させ、変位を元に戻す方法を取って来た。そのため工事の規模が大きくなり、非常にコストがかかるうえ工期も長くかかっていた。本ケースは、応力解放工事におけるこれらの問題点を解決するため、非開削による施工方法を考案し、施工環境の向上とコストダウンに成功した施工事例である。
今回考案した工法は、下水道管路の不陸修正用として使用されているU.G.S工法を利用したものである。U.G.S工法は、ウォータージェットにより管の直上を地盤切削し空隙作成による土圧軽減効果を利用して、薬液注入法により管を移動させる工法である。地盤改良・止水等の目的で行われている薬液注入を、局部的に行うと隆起する性質を管の修正に応用したもので、次のようなメリットがある。

  • (1)安価(開削工法の約1/2)である。
  • (2)騒音が小さい。
  • (3)作業帯が小さい。
  • (4)工期が短い(開削工法の1/2)。
  • (5)再沈下が起きにくい。

したがって、応力解放工事には非常に効果的な工法であるが、従来のU.G.S工法には次のような問題があり、ガス導管(鋼管)への適用が不可能であった。

  • (1)修正中の管の移動量が解らないため、適正な位置まで移動させるのが難しい。
  • (2)管上の土圧を軽減するため管の移動方向をウォータージェットにより泥水化するが、この際、ウォータージェットにより管の被覆を損傷したり劣化させる。
  • (3)薬液の近接注入による局部変移が発生しやすい。
  • (4)修正中の管の移動管理ができない。

そこで、次のように技術改造を加えて、非開削によるガス導管(鋼管)の応力解放工事に成功した。

  • (1)地上から埋設管に沿って一定の間隔でFM式沈下測定棒を設置し、この沈下棒により管の変位量の測定を行い、適正な位置まで管の移動を可能にした。
  • (2)ウォータージェットを管から適正な位置まで離すための最適離隔を設定し、管の被覆の損傷および劣化防止に成功した。
  • (3)薬液の最適注入位置を設定し、緩やかな移動により局部変位の発生を抑えることに成功した。
  • (4)FM式沈下測定棒の浮上量をレーザー光線により検出し、パソコンへデータ転送することによって修正中の管の移動量および構造解析プログラムによる応力値の管理を可能にした。

施工方法

(1)応力解放範囲の決定

地上からガス管に沿って一定の間隔で沈下測定棒を設置することにより変位量を測定し、ガス管の沈下曲線を決定した。本ケースのガス管の沈下量は、延長約60mの範囲において最大154mmを生じており、構造解析プログラムで合成応力を計算した結果、最大沈下点において最大応力を発生していた。そこで、沈下によるガス管の変位が始まっている両端の拘束点間を応力解放範囲とし、最大沈下点を中心に変位を修正することにした。(図-1略 )
なお、本施工に使用した沈下測定棒は非開削により設置が可能な磁石式のFM式沈下測定棒を使用した。沈下棒構造図を(図-2略)に示す。

(2)現地調査工

施工に伴う影響調査のため、試掘による他埋設物の位置調査および現地踏査による路面・構築物等の現況調査を行った。
また、ボーリングによる土質調査を行った結果、深度8m付近までN値が0〜2の腐食土層による軟弱地盤であることが確認された(図-3略)。

(3)他埋設物管理

ガス管の近傍に水道管および下水管が位置していたので、影響による変位量管理のため水道管については管底高測定を行った。
また、ガス管路上の舗装に縁を切るためのカッターを1m幅でガス管に沿っていれた。

(4)排土管・ガイドケーシングパイプ設置工

ウォータージェットの地盤切削による崩落防止のため、薬液注入(水ガラス系溶液型)により周辺地盤の締め固めを行った。薬液は中性タイプの溶液を使用することにより、ガス管の塗覆装への影響および周辺地盤の腐食環境の悪化防止を図った。

(5)事前引締注入工

ウォータージェットの地盤切削による崩落防止のため、薬液注入(水ガラス系溶液型)により周辺地盤の締め固めを行った。薬液は中性タイプの溶液を使用することにより、ガス管の塗覆装への影響および周辺地盤の腐食環境の悪化防止を図った。

(6)排土工

ガス管の修正移動に伴う土圧の軽減を図るため、ウォータージェットにより管上に空隙(泥水状態)を作成した。しかし、ウォータージェットの使用に伴うサンドブラスト現象が、ガス管の塗覆装に対して影響をおよぼすのではないかと懸念された。そこで、ガス管直上でのウォータージェットの使用を避け、ジェットの影響を受けない最適離隔を設定し施工を行った。

(7)修正注入工

修正移動は、水ガラス系懸濁型(セメント溶液)の薬液を管下に注入することにより行う。薬液注入(水ガラス系懸濁型)によるパイプの修正移動で非常に重要なのは、修正注入中のパイプの挙動管理である。ヒューム管のように継ぎ手が可とう性を持つものと異なり、溶接によって接合されているガス管(鋼管)は連続な弾性体である。したがって、修正注入による変位が局部的に起きたり、修正後の線形が不均一になる可能性が考えられた。そこで、局部隆起が起きないように注入深度を管下に設定し、修正移動範囲が広くなるように注入を行った。
修正注入による変位量の推移を図-4(略)に示す。
注入ポイントは沈下曲線の最大沈下点とし、修正注入作業はマシンの移動により6工程に分けて行った。
また、修正注入によるガス管の変位は、当初予想した局部的な隆起もなく緩やかに推移し、修正後の再沈下もほとんど無く線形も均一になった。また、修正移動量は沈下測定棒により測定を行い、レーザー測量器とパソコンによる演算によって常時変位量の管理を行うことにより、修正注入のコントロールと適正な応力値管理を実現した。

(8)事後引締注入工

ウォータージェットにより地盤切削された排土域の充填(水ガラス系懸濁型)を行った。

(9)復旧工

排土管・ガイドケーシングパイプの撤去と、路面および他埋設物の影響を確認し復旧を行った。なお、ガス管近傍の水道管・下水管への影響はほとんど無かった。施工断面を図-5(略)に示す。

まとめ

工事における工法選定は、施工環境・工事規模・コスト等を考慮し検討されるものである。したがって、各々の現場に適した工法選定が必要である。今回の応力解放工事に利用したU.G.S工法は、その施工性において従来の開削による工法に比べて非常に利点が多く、大幅な工期の短縮・コストダウンを図ることができた。
U.G.S工法は、下水の人孔やビルの傾きの修正等規模に関係無く利用されており、今後ガス管だけではなく、バルブピットやカルバート等のガス施設の修正に広く応用できるものと思われる。
最後に、本件施工において御協力をいただいた方々に深く感謝の意を表する次第である。

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